共同親権の導入、養育費、親子交流等の規定に関する民法改正が、令和6年5月17日に成立し、同月24日に公布され、公布から2年以内に施行される予定です。
今回は、上記の改正のうち養育費の改正に注目してコラムを書きたいと思います。
現在の養育費は、義務者から任意で支払われている間は問題ありませんが、支払が滞った場合に強制執行等をするためには、債務名義を取得する必要があります。公正証書で作成している場合(かつ強制執行認諾文言)は、強制執行可能ですが、公正証書を作成していない場合には、債務名義取得のためだけに、法的手続をとる必要があります。弁護士相談に来られる方は、養育費の取り決めは行っても、公正証書までは作成されていないケースが多く、債務名義を取得する必要がある方がほとんどです。債務名義をとれたものの、強制執行が困難なケースも少なくなく、そのリスクも含めて、債務名義を取得するために法的手続をとるか、検討する必要がありました。
もっとも、上記の改正民法により、養育費に先取特権が付与され、債務名義がなくても、担保実行として、差押等の法的手続きをとることが可能になるとされています。差押以外にも、財産開示手続、第三者からの情報取得手続の利用により、情報収集も可能になるとされています。
また、父母による養育費の協議がない場合でも、法定養育費制度が設けられ、始期は離婚の日からとされています。従前は、養育費が具体的に発生(始期)するのは請求の時と考えられていたため、養育費が発生しない期間がありましたが、改正により法定養育費制度が導入され、少なくとも法律施行後成立した離婚に関しては空白期間がなくなるとされています。
以上のとおり、従前より、養育費請求のためのハードルの低下及び養育費回収実効化が期待できる改正であり、以前相談されて養育費請求を断念された方も、改正後に再度相談をしてみてはいかがでしょうか。